July
2010
特集「『超』表層--表層と深層の関係から」
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小山泰介「表面的で/断片的で/人工的な、自然」(1/2)


左:Untitled (Melting Rainbows 32), 2010, Lightjet Print, Courtesy of G/P gallery
右:Untitled (Starry 08), 2009, Lightjet Print, Courtesy of G/P gallery
小山泰介さんは都市を撮影対象に作品を発表し続け、建築物の断片を拡大し、美しいグラフィックのような写真を抽出する写真家である。都市の変化を断片的に記録していた初期の頃から、雑誌「InterCommunication」での特集や、集大成となった写真集「entoripix」を経て、人工的なもののなかに自然のようにみえるものを見いだす、セットアップ型の作品を展開している。ここでは、そうした小山さんの作風の変遷を追いつつ、背景にある問題意識を探るインタビューを行った。
聞き手=藤村龍至
表層に踏み込む
藤村:小山さんの作品を拝見して、テキストなどを読んでいると、都市に対する言及が多いという印象をもっています。都市を撮影対象にしたきっかけは何ですか。
小山:生まれてから東京で育っているので、東京の街中を歩くというのは自然なことだったのですけど、一番最初に写真というものを強烈に体験したのが、森山大道さんが渋谷のパルコでやられていた「Fragments」という98年の展示です。その頃はまだ写真は旅行の時など趣味程度でしか撮っていなくて、写真家になるという意識は全くなかったのですけど、その時の森山さんの写真はずっと尾を引いていました。
藤村:小山さんが専門学校で専攻されたときの対象は自然であって、それが都市に向くというのは、森山さんの衝撃が結構あったのですか。
小山:自分の周りの景色とか、自分の生活を撮る写真家はいっぱいいるじゃないですか。そういう衝動は全く無くて、まず新宿や渋谷などの街に出ていって、歩きながらそこで写真を撮っていきたいという衝動が最初の頃からずっと続いているという感じですね。
藤村:断片的に切り取る、という操作はいつから出てきたのですか。
小山:感覚としては歩いていて、ここを写真に撮りたいなという直感で撮ろうとするのですけど、その画面の中の何処に自分が感じたポイントがあるのか、もう一歩踏み込むというか、自分が気になったポイントの中心だけを取るというか、そういう写真になっています。
藤村:ランドスケープを俯瞰するというタイプの写真家もいますよね。ホンマタカシさんの『TOKYO SUBURBIA』とか。断片と言ってもホンマさんも駐車場に転がったゴミとか。ある種の「引き」がある訳です。それに対して、小山さんは逆に極端に踏み込んで行く感じですよね。それが凄く特徴となっているところだと思います。
小山:僕だったらゴミからこぼれているジュースのシミとかを撮りたいと思うんですよね。ゴミがあるなと思ったら、そこで一番力強いポイント、状況がむき出しになっているようなポイントを撮ろうとします。
藤村:当時、ホンマさんやHIROMIXなど、日常を「引き」で撮るという構図はある種、表層的だとも言われた訳ですが、小山さんの場合は同じ表面を扱っているのだけれども、かなり恣意的な表現ですよね。その対比は面白いと思います。

左:Untitled (Melt 01 / No Smoking), 2006, Lightjet Print, Courtesy of G/P gallery
中:Untitled (O), 2007, Lightjet Print, Courtesy of G/P gallery
右:Untitled (Shading Vinyl), 2007, Lightjet Print, Courtesy of G/P gallery
「entoripix」に至るまで
藤村:森山大道さんの展覧会をご覧になったのが98年、そこから8年ぐらいで「entropix」に到るまではどのような経緯なのですか。
小山:写真を本格的に撮り始めたのは2003年の後半で、それからずっと街を歩きながら撮っていたのですけど、その中で自分は一体何を撮っているのだろうと一度行き当たったんですね。興味のあることはそんなに変わってない気もするんですけど、観るポイントが当時はまだ絞りきれていなかったというか。
大きなきっかけになったのは、NTT出版から出ていた雑誌『InterCommunication』の「東京スキャニング」という特集で、東京の「今」を切り取るというテーマでした。その時にちょうど、ららぽーと豊洲や国立新美術館、東京ミッドタウンなどが続々とオープンした頃で、ミッドタウンの工事現場などを中心に2ヶ月くらい集中的に六本木界隈や豊洲の周辺などを歩きながら撮っていたんですけど、そこに自分が撮りたいものが集中してあったんですね。それまで撮ってきたものは、大きな再開発の現場とかではなかったけど、常に街が変化しようとしている瞬間、ある建物が建てられてては取り壊されていく、そのような日常の中での人の生活や自然現象も含めた色んな活動の痕跡とか状況を撮っていたんだということを凄く強く自覚して、その時に東京というのは有機的に変化している街だなということを強く実感しました。そこから「entropix」というテーマや言葉に繋がっていったんです。
藤村:なるほど。「東京スキャニング」の時は断片的であるとか、フレームが無い感じなどは表現されていたように思うのですけど、小山さんの作品はその後、もっと顕微鏡的に物質のミクロの世界へ入っていく感じがしますね。
小山:それと前後して、ポスターのインクが溶け出した様子を撮ったんですが、その写真がとても抽象的で、元の情報が無くなってしまっているような、何か撮影した状況も含めて情報や背景が溶けてしまっているところに強烈に面白さを感じたんですね。
藤村:それはどういう感覚なんですかね。
小山:もともと写真を撮り始めた頃に、写真で何か物語るということが苦手だったんですね。背景にあるストーリーを提示するための写真というものから逃げたかったんです。そういう物語性を排除した所で、その1枚の写真からどれだけ深くイメージに入っていけるかどうかに関心がありました。写真ってありのままのものを撮ってくるんだけれども、プリントになった時にコンピューターのデバイスも掛かるし、紙の質感もあるし、いろいろなものが影響して最終的な写真になるので、そういった写真の性質に対してどれだけ自由に立ち向かえるかをずっと考えていたので、それに凄く近いものを手にしたという感覚はありましたね。
藤村:例えば杉本博司さんは「I am not hunter」とおっしゃっていますね。つまり決定的瞬間を捉えるのではないのだと。杉本さんはどちらかというとフレームが大事というかセッティングが大事で、何をこう撮るという方法がはっきりした時点で作品が出来る上がるというタイプの写真家ですよね。小山さんの場合、「方法」はどういうところにあるのでしょうか。
小山:今はちょっと変わってきているのですけど、もともとは撮るときは考えず撮って、後から考えるというスタンスが基本でしたね。
藤村:杉本さんの逆ということですね。(杉本さんは)撮る前に考えて、その先は考えませんという感じですよね。
小山:そうですね。その辺りというのは凄く森山大道さんの影響を受けていると思います。写真の見た目として影響受けてないじゃないかとよく言われるのですけど、そういった撮る行為とか撮った後のその写真を眺める行為とかそういう森山さんがとられているプロセスみたいなものはかなり影響を受けていると思います
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- 投稿元 : 写真の鉛筆 THE PENCIL OF PHOTOGRAPH 現代写真インターネットマガジン / 2011年08月19日21:37