June
2011
特集:北海道に学ぶ
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五十嵐淳 「状態」というコンセプトのルーツ 1/4


五十嵐淳氏 撮影:AAR編集部
五十嵐淳さんの建築は、「凍結深度」を利用した半地下の空間や、風除室から導かれた入れ子状の空間構成など、とても北海道的であると同時に、天井高を高く取ったり、外壁面積を多く取ったりと環境工学的に不利になってしまう構成を意図的に取ることもあり、反北海道的でもある。ここでは、ギャラリー間で開催中の展覧会「状態の構築」に合わせ、五十嵐建築から環境や地域性、空間へのアプローチを考えた。
聞き手=藤村龍至
不自由さで記憶に残す

「状態の構築」展 提供:五十嵐淳建築設計
藤村 今回ギャラリー間で開催されている展覧会「状態の構築」では、模型を1/10のスケールで統一されていました。どのようなコンセプトがあるのでしょうか。
五十嵐 いろいろな建築の展覧会を過去に見てきて、面白いなと思いつつ、建築の展覧会はアートと違って実物がないのできついなと思っていました。安藤忠雄さんがギャラリー間での展示で実物大の「住吉の長屋」を持ち込んでいましたが、いわゆる疑似体験です。実物大での疑似体験にはメリットもありますが、忘れてしまうような経験もあるような気がします。逆に不自由な状態なほうが考えるので記憶に残ると思うんですよね。
藤村 木製で統一された模型は迫力がありますね。
五十嵐 不自由な状態の模型をどうやって作ろうかと考えた時に、素材がスチレンボードだと厚みを増しても光を通してしまうので、光を通さずに模型を作ることを考え、木でつくることにしました。実際は白い壁でも、質量感としてはリアルな状態に近づくかなと思いました。光の状態と空間の状態を抽出して、リアルに感じてもらって、そこから先は家具も入れず、人も入れず、テクスチャーも表現せず、少し不自由な状態にして、見た人に想像してもらおうというコンセプトで作りました。

矩形の森 提供:五十嵐淳建築設計
藤村 作品集の巻末で長谷川豪さんが五十嵐さんの建築を家具やモノが混乱していても空間が抽象性を保っていることが現代的だと書いていますね。長谷川さんの論は西沢大良さんの「室内風景論」の観点に似ていて、初期の「矩形の森」や「トラス下の矩形」については言い当てていると思いますが、近作はより抽象化されているようにも思います。今回の模型では床がないですがなぜですか。
五十嵐 あれは半地下の部分をカットしています。半地下がないものは床が表現されていて、半地下の部分は床がカットされています。GLの設定の下がすべてない状態です。床から一メートルまで模型を持ち上げて地面があることをイメージしてもらおうと思いました。
藤村 外観を優先されたという印象もありますね。
五十嵐 そうではなくて、展示の方法として、床がなくても自分が考えていた光と空間の質感は感じることができたので、うまくいかないと思いました。床をなくすことで下から潜って上を見上げると半地下から見上げた状況を見ることができるので会場ではぜひ下から覗いてもらいたい。

風の輪 提供:五十嵐淳建築設計
藤村 半地下は五十嵐さんの建築の特徴のひとつだと思いますが、いつからですか。
五十嵐 「風の輪」からです。「凍結深度」と言って、北海道独特の決まりがあり、だいたい使っていると思います。
藤村 ギャラリー間のインスタレーションの方法はその人の建築観を表しますが、そういう意味で今回の模型の抽象化の仕方は、完全な光の状態を再現するというよりエアボリュームや関係を表した模型なのかなと思いました。
五十嵐 忠実にというより、人間の認識はどこか曖昧で、曖昧だけど最終的に残る印象があると思う。その印象のようなものを伝えたいと思いました。
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