March 2010

粟田大輔「書き換えられるシステム」(2/3)

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名和晃平《Catalyst#11》2008
vinyl oxide, acrylic panel、200 x 250 x 10 cm、Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE


アプリケーションの書き換え 名和晃平/徳山知永/石上純也

名和晃平は「表皮」あるいは「Cell(細胞)」といった理念をもとに彫刻群を展開している。名和の作品群が形態とシステムの連動性において興味深いのは、それらが単に自らの理念を結晶化させた物体(オブジェクト)であるに留まらず、メタオブジェクトのレベルにおいて分化生成がなされていることにある。それを果たしているひとつの要因が素材(マテリアル)の物性だが、素材が理念を実現するための手段として用いられるのではなく、素材の物性により理念自体が更新されるような制作のプロセスが見られる。実際、剥製(物質)を画素(PixCell)化させた「BEADS」から「Cell」が液状化した「LIQUID」あるいは膨張化した「SCUM」へ、また「Cell」の運動を平面あるいは立体に定着させた「GLUE」や「Cell」をプリズムボックス化した「PRISM」といった分化がなされている(名和の作品群については、http://www.kohei-nawa.netを参照)。名和自身こうしたカテゴリーを一種の「アプリケーション」としてみなしているが、注視すべきは、これらのアプリケーションが先行的な理念(内的な規制)あるいは素材の物性(他律的なシステム)のどちらかに則っているのではなく、理念と素材の連動性のなかで(峯村の論における、日本人の精神構造を含意した他律的なシステムとの「共生」にも通ずるが)「形態」をともなうことによって事後的に書き換えられている点にある。

こうしたアプリケーションの書き換えに対する指向は、徳山知永にも見られる。徳山は、石上純也の《神奈川工科大学KAIT工房》あるいは隈研吾の《ティファニー銀座》におけるCADソフトの製作で知られるが、そこでは「300本の柱」や「ファーサードの200枚のパネル」を一度にシミュレートするという通常のCADソフトにおいてシステムの運用を妨げるような限界値がある種「切断」のような役割を果たし、それにより「柱」あるいは「パネル」に特化したアプリケーションが事後的に構築されるに至っている。また、石上純也は「物質/非物質」といったヒエラルキーを並列化した上であらゆるものを同時に拾い出し「建築」を立ち現わせるという姿勢が見られるが、例えば《レストランのためのテーブル》あるいはキリンアートプロジェクトに出品された《テーブル》では、それぞれの条件において「テーブル」の理念が形態、素材あるいは構造との連動のなかで精査され、ひとつの空間に特化した三次元アプリケーションを構築するかのように、テーブルが「書き換えられた」状態として現出している。このように名和、徳山、石上には、それぞれ「物質/非物質」に対するスタンスの違いが見られるものの、素材であれ、数値であれ、空間であれ「切断」によって書き換えられる契機が立ち現われ、そこからひとつの事象に特化(あるいは分化)したアプリケーションの生成が看て取れる。

つづく