February
2012
特集:場所性のネクストステージ
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TNA 「建築的アプローチから場所性を考える」 2/2


キリの家:内観(2011年) (c)TNA
キリの家:ユーザーと建築を近づける
藤村 「基礎を立ち上げ、そこに人が寄り添う」という考え方はすごく建築的な捉え方ですね。一般的には人と空間の関係というと、何かイベントを企画して客を集めるようなことを発想すると思います。
武井 今までのプロジェクトを振り返ると、場所性というか、場所の質、場所の歴史、場所の環境をどう表出させるかがテーマになっています。なので、私たちは森の中の週末住宅も、プライベートな建物であっても、駅舎も、その場所にしかない固有性を探していると思います。
藤村 最近発表された「キリの家」(2011)ではどういう発想があのような独特な構成と特殊なボキャブラリーを導いたのでしょうか。
武井 考えたことが沢山ありました。とはいっても、設計を始める前から「何かこれ」ということがあるわけではありません。むしろ、敷地に行かないと設計は始まりません。そこへ行ってなぜその敷地を選んだのかを考えたんですね。
「キリの家」の場合は、道路ではない暗渠に接していて、あたかもそれが前面道路であるような顔をしていて、川の方へ向かって若干の勾配があり、法規的にも後退距離がかかり風致地区で緑化している住宅が多く、多摩丘陵の斜面が見えるという特徴があり、この場所に住むというのはどういうことかを考えました。
藤村 すごく小さい敷地のようですが、何坪くらいでしたか。
鍋島 10坪くらいの極小住宅です。必然的に垂直動線の占める割合が必然的に多くなります。
武井 建築面積も極小なので、外側に壁を建てるより、センターに厚い壁を建てた方が有効床面積を多く取れることが分かり、最初のスタディでは、スキップフロアと階段で構成されていました。ですが、全てのスペースを使い切りたいと考えると物足りなさを感じ始め、徐々にスラブが曲がり、スタディして上手く曲げていくと、スラブが「背もたれ」や「座るところ」になることが分かり、さらにスケールを調整して、心地よいスペースをとることができました。
「キリの家」で考えたことは、床を曲げることで、建築の駆体と、家具や椅子や風呂のような建築に付加されるものが切っても切れない関係になって、使用者と建築のあいだに近い関係をつくることです。このような、建築のフォルムが人間の意図を超えて感情行為を誘発することができるというのは、公共的な建築にも応用可能ではないかと考えていて、藤村さんが大学の授業で教えられているように小さな寸法に意識的になることは、大きい建物を設計する上で重要なことだと思います。それは「ディティール」とか「身体的」という言葉では片付けられない感覚ですね。

キリの家:外観(2011年) (c)TNA
敷地に行くまではいつもニュートラルでいたい
藤村 TNAの場合、それぞれのプロジェクトで形式や構成を発明されている印象がありますが、「カタガラスの家」(2008)の発展のようにも見えます。
武井 多少近いところはあるかもしれませんが、建っている環境が全く同じではないので、ずっと新しい何かを探していて、毎回敷地に行くまではニュートラルでいたいと思っています。
藤村 「キリの家」で、床を曲げることやタイトな寸法に対して、クライアントはどういう反応だったのでしょう。
武井 最初は1/100の模型でプレゼンしました。クライアントさんは驚いていたというより「凄い」と仰って、すぐに「これでやりましょう」ということになりました。実際の勾配の角度については横浜の客船ターミナルまで一緒に行って原寸で確認しました。
藤村 かわいい模型ですね。模型が小さいと抽象的な思考になりますよね。例えば、清家清さんも篠原一男さんも小さい図面でスタディする傾向があって、抽象的な思考を好んでいたようです。
鍋島 私たちはいつも最初は1/100で、1ミリが10センチという感覚です。お施主さんに見せる時は1/100の敷地模型に1/100の建築模型を入れるスタイルです。模型を大きくして考える時は、完全に現場に入ってからですね。

キリの家:1/100模型 (c)TNA
パナマの敷地
藤村 最近は海外のプロジェクトも進んでいると伺いましたが、今後の展開はどうお考えですか。
武井 最近スイスで1件住宅が竣工して、今はパナマで1件進んでいますね。ずごくお金もまわっている国なので活気があり、ビルの立ち方はドバイ的です。
藤村 それは運河があるからですか。
武井 そうですね。パナマ運河は世界の物流の7割が通過すると言われているので、結節点のような感じです。敷地はパナマ運河の横に立地する国立公園のなかで、高温多湿で亜熱帯の植生に近いので、ワイルドでジャングルのような自然環境です。一方で、自動車で3分くらい走れば高層マンションが建つ街に出れて、すぐ隣にはスラム街があり、その反対側に貿易の船が通っています。我々としては、異質な自然環境と都市環境が濃密に交錯しているなかで、雨がたくさん降る高温多湿な環境条件から建築を作るきっかけを発見したいと思っています。
藤村 すごく濃密な建築が出来そうですね。完成したらまたお話を伺わせて下さい。
2012年1月17日 TNAにて

武井誠(右)
1974年東京都生まれ。1997年東海大学工学部建築学科卒業(山田守賞)、東京工業大学大学院塚本由晴研究室研究生+アトリエ・ワン、手塚建築研究所を経て、TNAを鍋島千恵と設立。現在TNA代表
鍋島千恵(左)
1975年神奈川県生まれ。1998年日本大学生産工学部建築工学科卒業後、手塚建築研究所を経て、現在TNA代表
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