September
2010
特集:超都市からの建築家たち
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大西麻貴「住宅設計からみえる都市との関わり」(1/2)


大西麻貴「二重螺旋の家」 提供:大西麻貴
第1信:松島>大西
このたびはお忙しいなか、我々TEAM ROUNDABOUTキュレーションによるhitomiyoshiiで開催中の『Architects from HYPER VILLAGE』展にご参加いただきありがとうございました。
出展作品である『二重螺旋の家』は敷地形状の特徴をシーケンシャルに立体化した住宅ということで、その展開図ならぬ展開模型を拝見したとき、思わずお施主さんと同じ目線になって自分の生活をそこでシミュレートさせてしまう空間への純粋な楽しさを感じました。
この住宅は内部空間としての非常な豊かさを感じるとともに、巻き付くボリュームを通して、外部の周辺環境に対しても様々な表情を訴えかける作品であると思います。
まずは大西さんご自身による作品解説をお聞かせいただき、都市のなかにこの住宅が建つこと、周辺との関わり合いについてフォーカスしたお考えをお教えいただけますでしょうか。
第1信(返信):大西>松島
「二重螺旋の家」は東京都谷中に計画中の、小さな住宅です。「ギャラリーのような家をつくりたい」と依頼を受け、設計が始まりました。敷地が、細い路地のついた旗竿状の敷地だったことから、路地が延長されて、そのまま廊下となり、ぐるぐると巻きついたような形をしています。廊下は内部だけでなく、屋根の上もテラスや階段として使われるため、空間の構成として二重の螺旋空間が絡み合っています。
将来周囲に家が建ち、路地部分をのぞいて外観がほとんど見えなくなってしまうことを考えると、この家はとても内部空間的な家だといえます。道から始まって、アプローチがあり、廊下があり、部屋があり、また階段がある・・・という、一つながりのこの家の構成は、普段私たちが連続的に体験している空間を、そのままずるずると伸ばして、再び組み立てたようなものだと言うことも出来ます。それは記憶の中に呼び覚まされる空間の在り方にも似ています。
と同時に、この家は俯瞰してみるととても強い形、形式をしています。
中心のコアは単純なホワイトキューブですが、杉板貼りの周囲の廊下は物が付加され、住まう人によって手をかけ続けられることによって、谷中の路地が空中にたち上がったような豊かな場所としたいと考えています。

大西麻貴「二重螺旋の家」 (「超都市からの建築家たち」展より) 提供:藤村龍至建築設計事務所
ご存知の通り、谷中には古い木造家屋がたくさん残っており、お寺や緑も多く、細い路地には植木鉢が置かれたり、小さなカフェやギャラリーの点在するような、とても魅力的な場所です。それらの魅力的な場所は、ばらばらに存在しながらも、あるまとまりをもって私たちに谷中という街を印象づけています。そこには目に見えないネットワークがあるように感じます。この住宅もそのネットワークに参加するような住宅にしたいと思いました。
住宅一軒では、ネットワークに「参加する」ことしかできないかもしれませんが、出来ればネットワークそのものをデザインし、活性化させるような都市との関わりあい方が出来るといいなと思っています。
第2信:松島>大西
路地の延長としてのチューブは、中心の抽象的な空間と、雑多で活気溢れる谷中という町の間のバッファーゾーンという役割もあるのですね。都市に対して猥雑さのグラデーションを作っているという意味で、これまで住居のあちこちに点在していた縁側、バルコニー、屋上空間といった周辺との緩衝帯が、ひとつなぎになって展開していることがよくわかります。
70年代の『住吉の長屋』に代表される都市ゲリラ住居と80年代の『シルバーハット』や坂本一成先生の作品等に見られるような都市への開放をテーマにした住居という、時代的に極端に分裂した都市住居空間を両方内包して絡めてしまうというアウフヘーベン的構成に、現代特有の都市との距離感を感じます。
都市のノイズから離れたい一方で、ネットワークに参加したいという誰もが生活していくなかで持ち得る分裂した感情を、住居と都市の往来のなかのシークエンスで実現、解消しているという、現代的な振る舞いに気付かされる提案だと思いました。
そのことをふまえて、お話をうかがっていて面白いと感じたことは、「記憶の中に呼び覚まされる空間」という言葉です。
これは一瞬とても個人的な感覚の響きに聞こえますが、よく読み解けば、大西さんは誰にも共通する公約数的な空間経験を掴んで再構成しようとしている試みを行っているということがわかります。

大西麻貴「二重螺旋の家」 (「超都市からの建築家たち」展より) 提供:藤村龍至建築設計事務所
自身の空間経験を一度抽象化して、誰のものでもなく、誰のものでもある空間を建ち上げることは建築設計という行為の根本と考えますが、その所有不明な状態を、誰のものでもありながら誰のものでもない都市空間への距離感に織り交ぜているところへリアリティを感じています。
夢は現実記憶のデフラグ(断片化された情報の連続配置整理)と言いますが、以前の作品:『夢のなかの洞窟』もタイトルの通り、所在不明ながら鑑賞者全員が所有している空間の身体感覚を呼び起こそうとした作品だと感じています。
ここで少し具体的な設計についてお窺いしたいのですが、全体の構成とともに、例えば白と茶(杉板)というマテリアルの使い分けによって住み手の偶発的な行動や現象にわずかな制御を与えていると思います。そのほかチューブのプロポーションや開口部、コーナーといった各要素について、どのような変数を設定してスタディを行っていますでしょうか?
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