May 2010

保坂健二朗「アートから考える建築アーカイヴの未来」(1/3)

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イレーナ・ムレイ博士 写真提供:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻


2010年2月、RIBA (王立英国建築家協会)英国建築図書館の館長を務めるイレーナ・ムレイ博士が「平成21年度文化庁外国人芸術家・文化財専門家招へい事業」により来日した。21日には東京大学本郷キャンパスで開催されたシンポジウム「建築アーカイヴの現在と未来」で基調講演を行い、続くパネル・ディスカッションでは、ムレイ博士のほか、槇文彦(建築家)、竺覚暁(JIA-KIT建築アーカイヴス所長、金沢工業大学教授)、伊藤毅(東京大学大学院教授、建築史)、隈研吾(建築家、東京大学大学院教授)が名を連ねた。以下、このシンポジウムのレポートをかねて、「アートから考える建築アーカイヴの未来」について書いてみたい。

RIBAの図書館が所蔵している建築資料は、ドローイング、アーカイヴ、模型、近代の図書、古書、写真などと多岐に渡り、すべてあわせると4,000,000点になるという。そして数年前からは、MACやWINDOWSのOSとそれらが動くマシンを大切に保管しはじめているそうだ。
と書いたところで、別に驚かない人もいるだろう。なにせニューヨーク近代美術館(MoMA)が「@(アットマーク)」を購入するような時代だ。OSやマシンなんて、ミュージアム・コレクションとしてはむしろわかりやすい部類に入る。しかしRIBAがそれらを保管しているのは、収集の直接的な対象としてではないことに注意したい。1834年に創立したRIBAは、これからも続いていく「英国建築のアーカイヴ」というミッションを完遂するためにOSやマシンを集めているのだ。
設計で使われるCADやBIMはいくつもリリースされていて、またそれぞれに「ヴァージョン」がある。それゆえX年におけるCADデータをX+α年においても開けるようにするためには、X年に一般的だったOSと、それが動くマシンと、適応したソフトウェアが必要となる。設計の過程で生じたドキュメントを収集する建築アーカイヴとしては、そのドキュメントを「見る」ためのデジタル機器を何種類も用意しておかなければならなくなる。

いわゆる「ボーン・デジタル」は、ミュージアムやアーカイヴなど「収集」「保存」をミッションの一部とする施設の前に、重要だけれどやっかいな問題として立ちはだかっている。美術館の場合、とりわけメディア・アートという一次資料のレベルと、作品画像管理という二次資料のレベルで直面しているのだが、最終的にはメディア・アートを収蔵しないというオプションが残っているし、少なくない美術館がそういうスタンスをとっている。その事実からは残念ながら、未来の建築は美術館にとってメディア・アートと同じような存在になると予想せざるをえない。

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