ART and ARCHITECTURE REVIEWについて



「日本の伝統建築と文化を伝えるポータルサイトへ



ART and ARCHITECTURE REVIEW では、日本の伝統文化の保全と普及に向け、
「情報提供」と「実体験」を統合した、今までに無いサービスで、
多くの人に日本の伝統文化を広めていく活動を実現したいと考えています。










「あとがき」私たち自身としての文化財


この「あとがき」を書いているのは、二〇一一年四月十一日です。大震災から一カ月が過ぎました。
死者・行方不明者合わせて二万七千人余り、余震は収まらず、原子力発電所の危機は未だ続いています。
ニュースでは、研究者たちが「想定外」という言葉を繰り返していますが、本当にそうだったのでしょうか。
実は、歴史的な地震の記録と地質調査によって、約一一三〇年前に同じような津波があったことが
わかっていたのです。ですから、「想定外」と言うのは、ただの言い訳にすぎません。
この震災で、よく聞かれたのは、文化財は無事かという事でした。
東北の海岸沿いには、瑞巌寺(国宝)をはじめ幾つかの国宝・重文があります。報告によれば、これらの建物に、
津波の被害はありませんでした。思えば、これらは、幾度もの地震や津波をくぐりぬけて残ってきたのです。
建築に限らず、文化財は歴史の生き証人で、そこには歴史の知恵が限りなく秘められています。
そして、文化財にはそれを造った人たちの文化や人となりが否応なく表れます。
建物や街並みは、私たち自身であり、文化財は私たちを根なし草にしないための大切なよりどころなのです。
私は、福島で生まれ、福島の土と水で育ちました。故郷の町は今、放射能に汚され、恐怖と将来の絶望を抱えて
震える人たちであふれています。歴史を軽んじた私たち建築に携わる者すべては、これを機に、
被災された人たちに頭を垂れ、謝罪した上で、もう一度、建築を文化として見直さなければならないと思います。
これから、桜前線は北上し、被災地には、いつものように桜が咲きます。
中世の京で大災害が続き、夥しい人たちが都中に倒れた時、ある僧侶は、亡くなった人たち全ての額に、
成仏の種字一字をしるし、その菩提を弔いました。出来ることならば、散る桜の花びら一枚一枚に、この種字をしるし、
亡くなった人たち全てに、降らせられればと願わずにはいられません。

1