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レポート Fluctuated [Flat]Scape

前々回の投稿でもふれましたが、デンマークにあるRoyal Danish Academy of Fine Arts, School of Architectureにて、4月11日から19日にかけ、ワークショップを行いました。R&Sie(n)とは別個に、whiteweekendkitesとのコラボ レーションとして取り組みました。
今回は簡単にそのレポートを行いたいと思いますが、詳細なアーカイヴのために以下のサイトを立ち上げましたので、興味のある方はぜひそちらもご覧下さい。
> プロジェクトサイト
まず今回のワークショップの狙いですが、そもそも背景にあった問題意識が、「いかにして私たちが普段の暮らしの中で何気なく感じている空間を、より『ありのまま』に記述し、データ化することができるのか」という問いでした。
「何気なく感じている空間」は、どこまで自分が認識しているのかといった境界がとてもあいまいであったり、瞬間から次の瞬間にかけて急激に変化するような不安定さや、同じ場所に帰ってきても以前と異なって感じられるずれや不連続さがあったりするのに対し、3Dモデルの中に落とし込まれた実空間は、そういったクオリティーが決定的に欠落していることが少なくないという実感があります。
あたり前だと言ってしまえばそれまでですが、その部分をもっと掘り下げて追求し、3Dモデルの中で認識できる要素としてそういったクオリティーを捉える作業を行うことで、モダニズムの中では「あいまい」であるがゆえに軽視されてきた感覚的な要素を、定量的に評価可能なものとしてデザインに取り込むことができるのではないか。その方向にこそ、単なる効率化の道具だけではない、コンピュテーショナルデザインの大きな可能性があるのではないか。
私にとっては、今回のワークショップはそこでの問題意識を先鋭化させた最初の試みでしたが、その方向に多くの課題を得て、まだまだ開拓すべきことが確実に広がっていることを確認できたことが、大きな成果だったと考えています。
具体的なテーマ設定としては、「一般的な意味で『Flat(平ら)』な事物を、複数の現象の重なり合いとして分析し、それらの中にある差異や特異性を明確化する」ことをワークショップの課題としました。
平らであることは、数学的な定義からは自明であり、建築設計においても頻繁に多用される概念ですが、人間が感覚的に「平ら」だと認識する事物の中には、驚くほど広がりのある多様性が存在します。波紋の広がった水面、時間をかけて机に刻まれた傷やわずかな凹み、人の手によってはられたタイルの微妙なゆらぎ。そういった様々なものから、各チームごとに興味をもった分析対象をフィールドリサーチを行い、選び出し、それぞれが選んだ「平ら」さをより詳細に分析・理解すること、アウトプットとして、その特異性を複数のフォーマットにより記述することが目指されました。
ワークショップには、The Royal Danish Academy of Fine Arts, School of Architectureの学部一、二年生から45名が参加しました。
一、二年生が適宜混合されるよう9チームに分かれ、あらゆる作業をグループで行い、週末をはさんで7日間のプログラムの中、コペンハーゲンの街中でのフィールドリサーチにはじまり、3Dモデリングソフトウェア上でのプログラミング、模型作業を平行してすすめ、アウトプットとしてCNCミリングマシンによるプロトタイプ、デジタルモデルおよびその分析ダイアグラム、模型、アニメー ションを作成しました。

上のイメージは、各チームが収集した「平ら」さの事例の一つです。このチームは平らな表面にも、こうした淡い影が落ちることで、微妙なゆらぎを感じる、あるいは実際に存在する面のゆがみが感覚的にしかつかめないレベルでゆらぎとなってあらわれているのではないかといった点に着目していました。こういった各チームの捉えたテーマをスタート地点に、それぞれがデジタルツールとアナログな模型作業の両面から各自がテーマとした現象をより詳細に記述するべく作業を開始しました。

3Dモデルのプレゼンテーションパネルからの抜粋(上)、および構築した3Dモデルに対する分析結果の一例(下)です。
上のイメージは、例えば小枝のような断片的な要素が散在した状態が、ときに「平ら」な印象をもたらすことに着目したチームのプレゼンテーションです。プログラミングを用い、ランダムに生成した断片に対し、互いに引き合い、変形し、徐々につながりをつくる力をかけるプログラムを組み、その過程を幾度もシミュレーションすることで、「平ら」さが生じる瞬間を模索する。そのプロセスを繰り返し行っていました。また模型でも、プラスチックの断片を散在させた群に対し、設定したパス上にドライヤーをかけることで、プラスチックの断片が溶け出し、互いに表面張力でつながっていく様をスタディしていました。
下のイメージは、水面の波が一つとして同じものが存在せず、純粋な相似形でないにも関わらず、「同じ系統」の形として認識できることで、面としての連続性や広がりを感じられることに着眼したチームのものです。
彼らのアプローチは、数学的に合同な形状をもった面のグリッドをスクリプトにより生成し、その群に対し、一定のパスに沿いながら、かつグラデーショナルな重みをつけた一種類の力(ここではパス上の点に対してつまみあげる力)をかけることで、「同じ系統」として認識でき、かつすべてユニークな形を、定量的なコントロールのもとで反復してモデリングできることを発見しました。
また分析結果が示しているように、他のチームと比較しても、サイズや形状の分布状態のランダムさが高いことから、「同系統」の形の中にかなりの多様性を生み出せていることが確認できます。


完成したプロトタイプ(上)と模型写真(下)の抜粋です。
プロトタイプには、中間講評で選ばれたチームによる3DモデルをRoland MDX650というCNCミリングマシンで出力しましたが、その際、同時にモデル内のオブジェクト表面を微分して得られる表面の傾きと、相対的なZ座標値を凹凸の挙動に置き換え、視覚化しました。
模型写真に抜粋したチームは、同じサイズ、工法で制作された膜状の蓋と木箱に、充填型のフォームをやはり同じ手続きで吹き込み、外見的にはまったく均質に見えるジョイントの中に存在する非対称な脆弱さを、フォームの漏れとして視覚化するスタディを繰り返していました。
上の写真は最終講評で提出したもので、右側の木箱に漏れが集中していることがわかります。ちょうど水漏れの原因がどこであるかわからない天井面のように、均質に見えるものの中に潜在している非対称性の存在に着眼した、とても興味深い視点です。
全体の議論をとおして確認できたことの中で重要であったことは、こういった作業の中では、最適解を求めることには意味がない、「最適」という概念自体が存在しないということだったかと思います。
プロセスの結果として導き出せる複数の可能性をフラットに比較・検討し、どれが適しているかではなく、何がどう違うかを正確に、解像度を上げて描写できること。それぞれどんな特徴があり、どう魅力的なのかを数値化・言語化できることがきわめて重要で、その先に互いに違う価値観をそのものとして認め合えるような方法論の可能性が広がっているのではないか。そんな期待をもって締めくくることができたワークショップだったと言えるのではないかと思います。
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