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report : "Une architecture des humeurs"
今回は、前回お知らせしたParisのLe Laboratoireにて1月21日から開催されている、R&Sie(n)によるリサーチの展示、"Une architecture des humeurs"のレポートをしたいと思います。直接担当していたプロジェクトではなかったので、私自身、今回の投稿を通してリサーチの意味を再確認するようなレポートにできればと思います。
*より詳しい情報をご覧になりたい方は、R&Sie(n)による同リサーチに関する情報が掲載されたサイトがオープンしているので、こちら→http://www.new-territories.com/blog/architecturedeshumeurs/をご覧下さい。
+++++
そもそもの展示タイトルになっている”humeurs”とは、フランス語で、人間の心理的な反応を引き起こす生理的な生化学物質、を指す多義的な言葉なのだとか。そのタイトルが示すように、このリサーチでは、何よりまず人間の心理的かつ生理的な情報をもとにして、人間が集住しうる都市状の建築構造を生成するシステムがいかにして可能か、という問いに焦点があてられています。
プロジェクトチームには数学者のFrançois Jouve、コンピュテーション担当としてMarc Fornes、Winston Hampel、Natanael Elfassy、ロボットデザイナーのStephan Henrich、生理的情報収集ステーションにGaetan Robillard、Frederic Mauclere、ナノテクノロジーのシナリオのコラボレーターとしてBerdaguer & Pejus、”microneedles”を用いたデータ収集プロセスの技術提供者としてMarc Kendallが加わり、多分野のコラボレーターの協力の上に成立した領域横断的なリサーチが展開されました。
何より意欲的なのは、リサーチの一つの柱である、人間の心理に潜む欲求や矛盾する感情を、生理的な反応をとおして何とか取り出そうという試みと、それをあくまで非決定主義的に、しかしシステマティックに建築を構築していくためのデータとして読み取ろう、というところでしょう。そして、二つ目の柱である物理的構造の最適化プロセスの入力値として、生理的な反応から抽出されたデータを空間的なデータに置き換えるシステムへの取り組みも、とても興味深いものがあります。

具体的には、リサーチは次の9つの段階に沿って組織されています。
- From the physiology of “humeurs” to “malentendus”
-“Les malentendus” / Mishearing
- From the misunderstanding of “humeurs” to physio-morphological computation
- From physio-morphological computation to the multitude
(ここまでが居住者の心理的/生理的情報の抽出および空間的なデータへの置き換え)
- Mathematical operators for structural optimization
- The “algorithm(s)”/ l’Alg(s)
(物理的構造の最適化プロセスとそのアウトプット)
- From the “Algorithm(s)” to bio-knit physicality
- Tooling / Robotic process
- Tooling / Bio-cement weaving (material expertise)
(ラピッドプロトタイピング/ロボットによる建設過程及び素材のリサーチ)
上に挿入した左下の写真に写っているのが、心理的/生理的情報を読み取るためのステーションのプロトタイプです。居住者は、自身の欲求や社会性などを分析する為に一連のインタビューを受け、返答する代わりに、情報収集装置であるステーションにその生理反応を読み取らせることが想定されています。(- From the physiology of “humeurs” to “malentendus”)インタビューに対して繊細に反応する、ときに一貫性を欠くかもしれない複雑な人間の感情を、ある種のデータとして取り出せないかというのがその狙いで、実際の展示では、インタビュアーが常にステーションに待機しており、プロトタイプをとおしてこのプロセスが体験できます。
次に、この生理的情報をもとに、集住を行う居住者の間に成立する心理的/生理的な「距離」にもとづく関係性(“Les malentendus” / Mishearing)が描かれます。手続きとしては、数学の集合論を援用したロジックによって、この隣接する居住者同士のデータを掛け合わせ、12m角の立方体セルを単位としたボリューム内におさまる形態として置き換えていく、というものです。(From the misunderstanding of “humeurs” to physio-morphological computation)
このときセル内は4つの関係素(分離、包含、交差、統合)により、また近接するセル同士は5つの関係素(包含、交差、誘引、独立、対立)により記述され、この個別のセル固有の関係素の記述を満たしていくように、時系列にそってセルが3次元的に積層され、都市状の集住環境が居住者間の心理的/生理的な関係性に基づいたものとして形態化される、というロジックが提案されています。この際、付帯する情報として、輸送と公共のスペースが付加的にくわえられるようです。(- From physio-morphological computation to the multitude)

続いて、ここで3次元化されたデータを入力値として、物理的な構造の最適化プロセス(- Mathematical operators for structural optimization, - The “algorithm(s)”/ l’Alg(s))が続きます。写真は会場に設置されたモニターに写された最適化プロセスのムービーを撮ったものですが、ムービーそのものが上で紹介したブログにも掲載されているので、ぜひご覧になってください。
他にも会場では、各プロセスごとのデータを3Dプリンタで出力した模型が展示されていて、計算過程でどういった形状のモデルが介在しているかが紹介されています。(下写真)

3つ目の柱になるラピッドプロトタイピング/ロボットによる建設過程および素材のリサーチでは、複雑な幾何学に対応するため、Festo社の開発している”Fluidic Muscle”という技術を用いた人口筋肉をもつ4足歩行の建設ロボット(一番上の写真右下がその原寸模型)が、ノズルから生物由来樹脂とセメントを混合し繊維補強したものを押し出しながら建設を進めていくシステムが検討されています。(From the “Algorithm(s)” to bio-knit physicality, Tooling / Robotic process, Tooling / Bio-cement weaving (material expertise))
これは、2005年のI’ve heard aboutのプロジェクトでR&Sie(n)とコラボレーションしたBehrokh Khoshnevisという在米の研究者が開発している、Contour-Craftingというコンクリートプリンティングの技術と同系統のシステムをもとに、主にその素材面と押し出し方法において、いくつかの新しい提案が行なわれています。
生物由来樹脂とセメントを混合した素材に関しては、混合成分そのもの、およびその比率を変化させたサンプルを多数用意し、密度/気泡の差異の観察、および圧縮破壊試験が行われており、その代表的な6例が展示では紹介されていました。
+++++
以上、かなりおおまかに展示を振り返りましたが、領域横断的なコラボレーションがその核にあるという意味で個人的にもっとも興味深いと感じたのは、あるシステムをとおして人間の心理的/生理的情報を読み取り、それを空間的なデータに置き換えていくという試みでしたが、より実用段階に近い、構造の最適化のプロセスや、ラピッドプロトタイピング関連の技術に関するリサーチも、より建築設計の領域にダイレクトに導入する準備ができつつあるという意味では、非常にエキサイティングなトピックです。おそらく5-10年単位くらいで、この周辺の技術はかなり前進してくるはずだと考えています。
これらのリサーチをどういった問題意識のもとにその他のプロジェクトとリンクさせていくか、R&Sie(n)の活動の主軸の一つとして今後もフォローしていきたいと思います。
以下、展覧会クレジットです。
Une architecture des Humeurs
Le Laboratoire, 4 rue du Bouloi, 75001 Paris, Open from Friday to Monday 12-7 pm
Crédits /
-R&Sie(n) / Le Laboratoire / 2010
-Scénario, design, production : R&Sie(n) / François Roche, Stéphanie Lavaux
Associés à :
-François Jouve / Process mathématiques
-Marc Fornes, Winston Hampel, Natanael Elfassy / Computations
-Stephan Henrich / Process et Design Robotique
-Gaëtan Robillard, Frédéric Mauclere, Jonathan Derrough / Design et Process de captations physiologiques
-Berdaguer et Péjus / Scénario Nano-récepteurs
-Mark Kendall / Microneedles
-Delphine Chevrot / Takako Sato / “The Lift”
-Candice Poitrey / Interview Physiologique
&
-Chris Younes / Introduction aux «substances affectives »
&
-Jiang Bin, architecte
-Laura Bellamy
-Rosalie Laurin
*より詳しい情報をご覧になりたい方は、R&Sie(n)による同リサーチに関する情報が掲載されたサイトがオープンしているので、こちら→http://www.new-territories.com/blog/architecturedeshumeurs/をご覧下さい。
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そもそもの展示タイトルになっている”humeurs”とは、フランス語で、人間の心理的な反応を引き起こす生理的な生化学物質、を指す多義的な言葉なのだとか。そのタイトルが示すように、このリサーチでは、何よりまず人間の心理的かつ生理的な情報をもとにして、人間が集住しうる都市状の建築構造を生成するシステムがいかにして可能か、という問いに焦点があてられています。
プロジェクトチームには数学者のFrançois Jouve、コンピュテーション担当としてMarc Fornes、Winston Hampel、Natanael Elfassy、ロボットデザイナーのStephan Henrich、生理的情報収集ステーションにGaetan Robillard、Frederic Mauclere、ナノテクノロジーのシナリオのコラボレーターとしてBerdaguer & Pejus、”microneedles”を用いたデータ収集プロセスの技術提供者としてMarc Kendallが加わり、多分野のコラボレーターの協力の上に成立した領域横断的なリサーチが展開されました。
何より意欲的なのは、リサーチの一つの柱である、人間の心理に潜む欲求や矛盾する感情を、生理的な反応をとおして何とか取り出そうという試みと、それをあくまで非決定主義的に、しかしシステマティックに建築を構築していくためのデータとして読み取ろう、というところでしょう。そして、二つ目の柱である物理的構造の最適化プロセスの入力値として、生理的な反応から抽出されたデータを空間的なデータに置き換えるシステムへの取り組みも、とても興味深いものがあります。

具体的には、リサーチは次の9つの段階に沿って組織されています。
- From the physiology of “humeurs” to “malentendus”
-“Les malentendus” / Mishearing
- From the misunderstanding of “humeurs” to physio-morphological computation
- From physio-morphological computation to the multitude
(ここまでが居住者の心理的/生理的情報の抽出および空間的なデータへの置き換え)
- Mathematical operators for structural optimization
- The “algorithm(s)”/ l’Alg(s)
(物理的構造の最適化プロセスとそのアウトプット)
- From the “Algorithm(s)” to bio-knit physicality
- Tooling / Robotic process
- Tooling / Bio-cement weaving (material expertise)
(ラピッドプロトタイピング/ロボットによる建設過程及び素材のリサーチ)
上に挿入した左下の写真に写っているのが、心理的/生理的情報を読み取るためのステーションのプロトタイプです。居住者は、自身の欲求や社会性などを分析する為に一連のインタビューを受け、返答する代わりに、情報収集装置であるステーションにその生理反応を読み取らせることが想定されています。(- From the physiology of “humeurs” to “malentendus”)インタビューに対して繊細に反応する、ときに一貫性を欠くかもしれない複雑な人間の感情を、ある種のデータとして取り出せないかというのがその狙いで、実際の展示では、インタビュアーが常にステーションに待機しており、プロトタイプをとおしてこのプロセスが体験できます。
次に、この生理的情報をもとに、集住を行う居住者の間に成立する心理的/生理的な「距離」にもとづく関係性(“Les malentendus” / Mishearing)が描かれます。手続きとしては、数学の集合論を援用したロジックによって、この隣接する居住者同士のデータを掛け合わせ、12m角の立方体セルを単位としたボリューム内におさまる形態として置き換えていく、というものです。(From the misunderstanding of “humeurs” to physio-morphological computation)
このときセル内は4つの関係素(分離、包含、交差、統合)により、また近接するセル同士は5つの関係素(包含、交差、誘引、独立、対立)により記述され、この個別のセル固有の関係素の記述を満たしていくように、時系列にそってセルが3次元的に積層され、都市状の集住環境が居住者間の心理的/生理的な関係性に基づいたものとして形態化される、というロジックが提案されています。この際、付帯する情報として、輸送と公共のスペースが付加的にくわえられるようです。(- From physio-morphological computation to the multitude)

続いて、ここで3次元化されたデータを入力値として、物理的な構造の最適化プロセス(- Mathematical operators for structural optimization, - The “algorithm(s)”/ l’Alg(s))が続きます。写真は会場に設置されたモニターに写された最適化プロセスのムービーを撮ったものですが、ムービーそのものが上で紹介したブログにも掲載されているので、ぜひご覧になってください。
他にも会場では、各プロセスごとのデータを3Dプリンタで出力した模型が展示されていて、計算過程でどういった形状のモデルが介在しているかが紹介されています。(下写真)

3つ目の柱になるラピッドプロトタイピング/ロボットによる建設過程および素材のリサーチでは、複雑な幾何学に対応するため、Festo社の開発している”Fluidic Muscle”という技術を用いた人口筋肉をもつ4足歩行の建設ロボット(一番上の写真右下がその原寸模型)が、ノズルから生物由来樹脂とセメントを混合し繊維補強したものを押し出しながら建設を進めていくシステムが検討されています。(From the “Algorithm(s)” to bio-knit physicality, Tooling / Robotic process, Tooling / Bio-cement weaving (material expertise))
これは、2005年のI’ve heard aboutのプロジェクトでR&Sie(n)とコラボレーションしたBehrokh Khoshnevisという在米の研究者が開発している、Contour-Craftingというコンクリートプリンティングの技術と同系統のシステムをもとに、主にその素材面と押し出し方法において、いくつかの新しい提案が行なわれています。
生物由来樹脂とセメントを混合した素材に関しては、混合成分そのもの、およびその比率を変化させたサンプルを多数用意し、密度/気泡の差異の観察、および圧縮破壊試験が行われており、その代表的な6例が展示では紹介されていました。
+++++
以上、かなりおおまかに展示を振り返りましたが、領域横断的なコラボレーションがその核にあるという意味で個人的にもっとも興味深いと感じたのは、あるシステムをとおして人間の心理的/生理的情報を読み取り、それを空間的なデータに置き換えていくという試みでしたが、より実用段階に近い、構造の最適化のプロセスや、ラピッドプロトタイピング関連の技術に関するリサーチも、より建築設計の領域にダイレクトに導入する準備ができつつあるという意味では、非常にエキサイティングなトピックです。おそらく5-10年単位くらいで、この周辺の技術はかなり前進してくるはずだと考えています。
これらのリサーチをどういった問題意識のもとにその他のプロジェクトとリンクさせていくか、R&Sie(n)の活動の主軸の一つとして今後もフォローしていきたいと思います。
以下、展覧会クレジットです。
Une architecture des Humeurs
Le Laboratoire, 4 rue du Bouloi, 75001 Paris, Open from Friday to Monday 12-7 pm
Crédits /
-R&Sie(n) / Le Laboratoire / 2010
-Scénario, design, production : R&Sie(n) / François Roche, Stéphanie Lavaux
Associés à :
-François Jouve / Process mathématiques
-Marc Fornes, Winston Hampel, Natanael Elfassy / Computations
-Stephan Henrich / Process et Design Robotique
-Gaëtan Robillard, Frédéric Mauclere, Jonathan Derrough / Design et Process de captations physiologiques
-Berdaguer et Péjus / Scénario Nano-récepteurs
-Mark Kendall / Microneedles
-Delphine Chevrot / Takako Sato / “The Lift”
-Candice Poitrey / Interview Physiologique
&
-Chris Younes / Introduction aux «substances affectives »
&
-Jiang Bin, architecte
-Laura Bellamy
-Rosalie Laurin
