プロフィール

matsushimaJP

カレンダー

2012/02

1月 < > 3月

S M T W T F S
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29      

最近のエントリー

最近のコメント

最近のトラックバック

02月 08日 07:10   /  FDmountwill_millsの日記
[社会] #LRAJ2010 Ust配信 PCの前でぶっ続けで見た

ヒット数

  • 本日: 116 hits
  • 累計: 5314 hits
  • ※過去30日の累計を
    表示いたします。

RSS

rss1.0

rss2.0

人間と歌

Bookmark and Share
世の中には死ぬまでに一度でいいから、生で、目の前で聴いてみたい曲があるものだ。
その人に近づけば近づくほどいい。
出来ることならmm単位まで貼り付いた状態で聴きたい曲。

僕の場合は、
Maurizio Pollini : ショパン『Etude Op.10 No.01 in C major_Allegro』
Nuno Bettencourt : 『Midnight Express』
そしてCyndi Lauper : 『I'm Gonna Be Strong』である。






Lady GAGAが来日したから、天邪鬼的にCyndi Lauperの懐古話をするわけじゃないです。
いつだろうがなんだろうが、僕はこの曲が大好きなんである。
もーなんてったって好きなのだ。


素敵であるとともに、変な曲である。
リフ→ヴァース→ブリッジ→サビ→繰り返し、なんてお約束の流れには乗らない。
ただただ一本道でテンションが上がっていき、
絶唱、という程にタコメーターが振り切って終わる。

かよわく始まりながら、
いつの間にか強靭な意志の煌きを見せ付ける凄まじいテンションへと至るが、
ラストの絶唱部分の歌詞は

And you'll never know darling
After you kiss me goodbye
How I'll break down and cry.


と、弱さで終わる。
真っ直ぐだけど、皮肉な曲でもある。
ラブソングでありながら、毅然としたメッセージソングのように聴こえるところも心を掴む。



さて、この曲はカヴァー曲である。

1963年にFrankie Laineが発表し、
1964年にはGene Pitneyがカヴァー
その16年後、1980年にシンディがソロでデビューする前のロカビリーバンド:
Blue Angelsでカヴァーをリリース。



そして1994年に現在のヴァージョンへと至る。
30年越しのメロディなのだ。

こちらはスタジオ版。



前二者のヴァージョンも素晴らしいが、
シンディの手に渡ったときの昇華具合はすごいものがある。
メロディをいじくりまくっていて、
一本道で昇り詰めていく連続感が巧妙に作られている。
(スタジオ版の2分3秒に一瞬挟む"wowow"とか、2分11秒のdarlingとか、)
しかもそれを、極めて無邪気にやっているような印象もある。


+++



1994年当時、15歳だった僕を含めて田舎の中高生までにもバカ売れした
彼女のベスト盤:『TWELVE DEADLY CYNS...AND THEN SOME』において、
『Girls Just Want to Have Fun』も
『Time after Time』も
『True Colors』も差し置いてこの曲が冒頭を飾る理由は、
彼女の音楽活動の原点の曲であるとともに、
商業的なことは無関係で、確固たる手ごたえがあったのだろうと思う。


このアルバムは夜更かしを覚えた頃、深夜にテスト勉強の傍らよく掛けたものだ。
『All through the night』
『I Drove All Night』
『The World Is Stone』
は世界に僕しかいない、冬口の静かな深夜によく似合う曲だった。

80年代特有のリヴァーヴ掛かりまくりで奥行きありまくりな音と、
シンディの特徴でもあるフラットに長ーーーーーーく続く長音と、
その後に細~か~く揺~さ~ぶ~る~ヴィヴラートの掛け合わせが、
まだまだ世界には時間があるような感覚を与えてくれて、楽しかった。


そして朝方、夜が白む頃の時間帯に流れる
『I'm gonna be strong』の恍惚感は何にも変えがたいものがあった。
寄り道せずに一本道で上っていくこの曲はなんとなく日の出のイメージで、
自分にとって縁起の良い曲、みたいな感じもあったんだけど、
それよりも、歌というものの原点が見えるような気がしていた。

というもの、僕は基本的にポリフォニー (複数声部)の複雑な絡みが好きなのだが、
モノフォニー(単声部)でここまで愛せる旋律は生まれて初めてだったから。
また何度も言っているように、一本道で昇るという構成で、ちょこざいな企みがないこと。
メタカヴァーという複雑な経緯を辿りながら、
複雑なまま、歌のオリジンに回帰しているような不思議な表情を感じたのだ。


歌のオリジンって?


+++

現在における世界最古の歌は、シリアはウガリットから出土した
約3400年前の粘土板にフルリ語で書かれていたものらしい。
なんとびっくり、ポリフォニー。クラスは2つあるとのこと。
しかしそれが2つのメロディーが絡むものなのか、
メロディとリズムなのかはわかっていない。


完全な形で残っている楽曲、つまり再現可能な世界最古の歌は、
トルコはアイドゥンで発見された『セイキロスの墓碑銘』である。
こちらはモノフォニー。
紀元前2世紀頃から紀元後1世紀頃に作られたもので、歌詞もある。





生きている間は輝いていてください

思い悩んだりは決してしないでください

人生はほんの束の間ですから

そして時間は奪っていくものですから




今の我々にとって世界最古のものが「時間のなさ」を歌っているとは皮肉だね。
メロディは検索すれば聴けます。


『セイキロスの墓碑銘』 現代譜



村上春樹:『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』では
影を剥がされた「僕」が人間存在を取り戻す象徴として、歌を思い出すシーンがある。

『新世紀エヴァンゲリオン』でも、第17使徒:タブリスこと渚カヲルくんが言う。
「歌はいいね。歌は人の心を潤してくれる。リリン(人間)の生んだ文化の極みだよ。」


同世代のアーティスト:高木正勝氏は『Tai Rei Tei Rio』でこの命題に迫ろうとしている。
余談だが、僕は彼のライブアルバム:『Private/Public』に収録されている
10分21秒の大曲:『Rama』が、最もその領域に近づいている極みだと思っている。
音楽でここまで感動したのは本当に久しぶりだ。



思うに『I'm gonna be strong』も、『セイキロスの墓碑銘』も、
歌も、文化も、世界が思い通りにならないから歌うのだ。
彼/彼女と別れないといけないこと、人生が儚いこと、
時間になされるがままの世界において、人間が時間で抗う手段なのだ。

短く限られた時間のなかで生命維持の時間をふと忘れ、
いや、時間そのものを忘れ、歌に大事な大事な時間をくれてやる。
歌に命を燃やして、歌に投資するのだ。


+++

今のシンディが、アカペラで『I'm gonna be strong』を歌っている。





ラストのcry三連発を生で聴いている人たちが上げる声は、
歓声というよりは悲鳴に近い。
僕だって生で聴いたら、間違いなく悲鳴を上げるだろう。

これを歌っているシンディは、55歳である。
まだまだ、時間はあるよね。

みんなからのコメント

トラックバック

この記事のトラックバックURL