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ルートマスター
長らく物議を醸していた、新しいダブルデッカー(正式名称;ルートマスター)がようやくロンドン市内を走り始めました。前後両方から乗れる新しいバスは旧型のダブルデッカーの乗りやすさと、旧型で課題だった乗員数を増やす事の両方に貢献した優秀なデザイン。(byトーマス・ヘザウィック)
現市長ボリス・ジョンソンは前市長の提案した数珠つなぎのベンディーバス(通称)を市内から一掃し、新しいデザインのバスを導入するといった挑戦的な手法を取った事で周囲に賛否両論の意見を巻き起こしました。また、ただでさえ経済不振のロンドンで、新しいバス運行の為につぎ込んだ税金(約1100万ポンド)を非難する人も多く、お披露目のあった2月27日には新しいバスを囲んでデモが行われていたようです。
実はこのデザイン、後ろから乗った場合にはチケットのチェックが無いため、タダ乗りが増える(できる?)というのも周囲の関心事のようです。(タッチ式の支払機はあるのですが)
なにわともあれ、オリンピックに間に合って完成したこのバスは、暗いニュースが多いなか、久しぶりの平和な話題になっています。

現市長ボリス・ジョンソンは前市長の提案した数珠つなぎのベンディーバス(通称)を市内から一掃し、新しいデザインのバスを導入するといった挑戦的な手法を取った事で周囲に賛否両論の意見を巻き起こしました。また、ただでさえ経済不振のロンドンで、新しいバス運行の為につぎ込んだ税金(約1100万ポンド)を非難する人も多く、お披露目のあった2月27日には新しいバスを囲んでデモが行われていたようです。
実はこのデザイン、後ろから乗った場合にはチケットのチェックが無いため、タダ乗りが増える(できる?)というのも周囲の関心事のようです。(タッチ式の支払機はあるのですが)
なにわともあれ、オリンピックに間に合って完成したこのバスは、暗いニュースが多いなか、久しぶりの平和な話題になっています。
融合する社会へーACADIA2011
©AA EMTECH
先日カナダのバンフで行われたデジタルアーキテクチャーの国際学会ACADIA2011にプレゼンターとして参加してきた。
80年代初頭から続くACADIAはこの分野の国際学会では最も古いもののひとつで、CAD黎明期から建築デザインとコンピューテションについての研究をサポートしてきた。当時、CADはまだデザインコンピューティングと呼ばれていた時代で、現AutodeskのRobert Aish、FormZのChris Yessios, BIMの生みの親として知られるChuck Eastmanなどの開発者は皆このコミュニティーを通じて繋がってきた。また80年代といえば、ソフトウェアという概念が生まれ、コンピューターが専門化した計算機から多様な用途を持ったツールへと進化を遂げた時代でもある。Machintoshが84年に発売され、Windows1.0は85年に発売されている。社会全体がこの新しい機械に急速に馴染み始め、西海岸のソフトウェアの開発者達にとってはまさにフロンティアが開けた時代でもあったのだろう。
それから30年後の2011年。ジョブスの訃報によって、コンピューテーションの第一世代とって時代の一つの終止符が打たれたようにも感じる。多くの技術は飛躍的に進化したが、建築そしてコンピューテーションの外の世界に目を向けると、いまだに解決していない問題は80年代からまったく変わっていないことに気がつく。エネルギー問題、温暖化、生物種の絶滅、戦争、飢餓、政治経済の不信、富と正義の不平等、教育/文化/芸術への不理解といった問題は今も毎日のようにメディアを賑わせている。そんな中、僕たちの世代はどのような未来を描くのだろうか。
今回のテーマとなった’Integration through Computation’について、オーガナイザーの一人であるカルガリー大学のBranko Kolarevic は過去30年のこの分野での業績を総括しながら、それぞれのフィールドで培われてきたの’知の統合’が未来に向けての新しい原動力になると位置づけていた。それは従来の建築分野に縛られることなく生物学、素材工学、物理学、環境学など専門外からの研究を取り入れながら社会に還元していくトータルなものづくりに向かうことを意味している。
基調講演となったAA, EMTECHのMichael Weinstock*やtransLABのMarcos Novak**によって都市レベルでの知の統合が理論的なスケールで語られるとともに、DIY、Hacking、ソフトウェアのプラグインの開発など***、ローカルで具体的な活動についても多くの注目が集まった。
©Marcos Novak / transLAB
改めて感じたことは、デジタルメディアのスケール感の希薄さは、専門分野の統合を推進する強力なアドバンテージになっているということだ。
実際の物質(建造物や都市)としてリアリティーをもつ前の段階では、理論やシステムは拡大、縮小、反復をすることで様々なスケールに対応することができる。逆に言うと、まったく別のスケールで発想された議論が、別の規模のプロジェクトで応用できる可能性が広がるということでもある。これによって、今まで以上に異なった分野からの応用研究が盛んに行われるようになった。
またデジタルファブリケーションの利用によって、手のひらに乗る3次元模型から、等身大の空間までプロトタイプの制作が容易になった。学生によって提案された建築模型を1:1の大きさまで拡大することで、建築のもつ物質的な説得力は現実味を増し、閉じられた学内の批評の枠からより多方面の人の参加を促すようになった。同時に、従来アカデミックとプロフェッショナルの間に存在した垣根も解消される方向に向かっている。
つまりどちらの場合も、スケール(さらに言えば次元)の横断が可能になったことによって、専門分野の異種交配が自然に促されるようになったといえるだろう。
シュトゥッツガルト大学 Achim Mengesユニットによるパビリオン
Photo by A. Lautenschlager
それは作り手のものづくりの姿勢にも徐々に影響を与えている。
ユニバーサルに思えるコンピューテーションの世界にも地域性は現れるもので、個人的には初めて訪れるこの北米の学会ではヨーロッパとは異なる文脈の議論が盛んに行われていたことが印象的だった。
それについては、次回に続けようと思う。
*初日の基調講演となったAA, EMTECHのMichael Weinstockは人口爆発を契機に今後30年間に世界で生まれる都市の数は2000を超えるだろうというリサーチを紹介した。これは今現役で活動する30代の建築家がその生涯で直面する劇的な社会の変化を明示している。20世紀の資本主義が作り出した都市から我々が何を学び、今どれほど有効な都市戦略を持ち得ているのかを分析をすることが現在の最重要課題であると指摘した。彼はそのリサーチの中で交通、水、エネルギー、情報、ゴミ処理、緑地、憩いの空間を都市インフラの7つのシステムと定義し、それらの関係性をダイナミックなネットワークとして構築する事が必要だと解説した。マテリアルシステムリサーチを中心としていたEMTECHの方向性が近年徐々に都市のスケールへと拡大しつつあることは、彼の問題意識と重なっている。
**2日目の基調講演に立ったtransLABのMarcos Novakは’Information obesity’、つまり情報が豊潤になった時代に我々の’栄養バランス’は崩れ、逆に怠惰がもたらす肥満という弊害を生み出していると警鐘を鳴らした。彼は古代文明の持っていた人間と自然の関係性を取り戻すことが、ひとつの処方箋になると考え、ギリシャ神話と日本の神道に見られる自然観、そしてそこに物語としての神を見るまなざしに共通性があると説明した。80年代盛んにサイバースペースについて語り、演劇、映像、彫刻作品を通じて常に斬新な空間と人間のあり方を提案し続けてきた彼が今構想する自然と人間との関係性は、ユートピアの世界に収斂していくものではなく、さまざまな技術と芸術の総合体として現状に抗する共同体Allopolis(Allo-他の、また別の polis-都市)を形成することに繋がっていくようだ。
***カリフォルニアのDr. Garnet Hertzはマッドサイエンティスト&一人ガレージバンドを体現する奇才で、ゴキブリの脳をICチップに、運動能力をモーターの駆動体に直接利用したロボットRoachbotを紹介した。また違法寸前のプロジェクトAutoRunでは、ゲームセンターのレーシングカーを改造した車で実際の道路を走りながらリアルタイムキャプチャーした映像を8bitの解像度にダウングレードし、映ったスクリーンを見ながら走り抜けるパフォーマンスを紹介。自らの研究をAugumented Reality(拡張現実)に対する、Obfscated Reality(錯乱現実)という言葉で解説し大いに反響を得た。
コミュニティーの治癒力
©PA通信
ロンドンから英国各地へ広がった先日の暴動は、沈静化まで1週間を要した。略奪による死者は5名、逮捕者は二千数百名に上るこの事件は、オリンピックを翌年にひかえるこの国に大きな不安と衝撃を残している。
イギリスにおけるデモや暴動の歴史は長く、昨年も大学の学費高騰に端を発する学生デモが暴徒を生み、保守党の建物を破壊し、不法占拠を行った。
8月9日にリアルタイムでアップデートされたGoogle暴動マップ。
これによって帰宅を早めたり、帰路を変更したりする人も多かった。
所得層に関わらず、若年世代全般の社会への不安が明らかになった昨今の事件に政府は有効な対策をとる事が出来ていない。またソーシャルネットワークを利用した同時多発的な暴動の広がりにも対応は遅れを取るばかりだった。その反面、地域コミュニティーは敏感にその危機感を感じ取っている。ロンドンの南部、低所得者が集まる地域といわれ今回の暴動の標的となったブリクストン、クラッパムの両エリアでは、事件直後から破壊された町並みを立て直すため、自発的な集会、清掃、呼びかけが行われ始めた。また、未だにバリケードを張ったままの小売店の壁には地域住民からメッセージが残されている。
ロンドンにおけるEthnic Minorityの割合は30%を占め、他民族が集まって暮らし、所得格差も大きいこの街では争いの数も少なくはない。ただ、それを救うためにハリウッドのようなヒーローは現れない。社会的な混乱に対して一人一人が危機感を持ち、自発的に行動する。ネットワークを利用してクリティカルマスを形成する。そうして生まれるコミュニティーの治癒力はこの街の本当の強さ、そしてイギリスという成熟した民主主義国家の祖型を現しているように感じた。
Apple本社ビル
メディアで発表されたのでご存知の方も多いとは思いますが、
Foster + Partnersがシリコンバレーに設計をしているアップル社新社屋の計画案が公開されました。
1万2千人の社員が一つの建物で働くというコンセプトで、2015年の完成を予定しています。
"Mothership has landed"(宇宙船がおりてきた)という市長の最初の感想は確かに的を得ていますね。。。
これからも不眠不休の作業が続く予定です。

スティーブジョブスによるCupertino市への口頭演説はYouTubeで紹介されています。
Foster + Partnersがシリコンバレーに設計をしているアップル社新社屋の計画案が公開されました。
1万2千人の社員が一つの建物で働くというコンセプトで、2015年の完成を予定しています。
"Mothership has landed"(宇宙船がおりてきた)という市長の最初の感想は確かに的を得ていますね。。。
これからも不眠不休の作業が続く予定です。
スティーブジョブスによるCupertino市への口頭演説はYouTubeで紹介されています。
SmartGeometry2011
Agent Construct Cluster
3月28日からコペンハーゲンで開催されたSmartGeometryに参加してきた。
以前も紹介したように、SGは年々ネットワークを拡大しながら大学をベースにしたワークショップとアカデミックなカンファレンスを行うデジタルアーキテクチャーのイベントで、今年はコペンハーゲンのデンマーク王立芸術学院の協力を得て開催された。
ディレクターのShaneBurger(Grimshaw NY)曰く、「はじめて十分な広さの場所、充実した工房、そして施設内のフルWifiアクセスの3つがそろったワークショップになった」との事で、満を持しての開催に嬉しさがこみ上げている様子だった。
今年のテーマとなった'Building the invisible'はまさに現代社会にあふれる”見えない情報”の中での建築像そしてそれを担う建築家の役割が問われているものだといえる。毎年選ばれる10組の講師陣のテーマはそれぞれがメインテーマを解釈し直したものとなっていて、特に目立ったものはセンサーやUDPを使って人間のアクティビティーや都市空間に流れる情報をリアルタイムでインプットしていく手法を建築に応用したものだった。
Performing Skin Cluster
たとえば、触覚センサーを生地に埋め込みながら繊維を縫い込む手法を試したクラスターPerforming Skinでは,縫い上げたものが人間の肌と同様に圧力や温度に反応し、それが建築を皮膚のように覆うというイメージを実際の作品に仕上げている。また、Reflected Environmentというクラスターでは実際のワークショップが行われている部屋の人の密度や移動、温度や電力消費量を観測し、それをモーターで浮き沈みするクラゲのようなオブジェクトを通じて環境を可視化させる試みをしていた。
さらに、ユーザーインターフェースとAR(Augmented Reality)を活用したInteracting with the cityクラスターではユーザーが実際に都市の情報に触れ、体感するという一種の疑似空間をテーマにしたもの。ヴァーチャルなものとアクチュアルなものの混在を日常として受け入れている現代の我々の生活をさらに加速させる装置として、実験的なインターフェースのあり方を試みている。
Interacting With The City Cluster ©Przemek Jaworski
より複雑化した社会の中で、現代の建築家は今までに無く多くの情報を扱い、判断する事を期待されている。
目に見えない情報も含め、一つ一つを可視化していき、ユーザーがアクセスしやすいインターフェースやプラットフォームを作るという事は最重要課題の一つだろう。そしてそれぞれの情報を的確に判断するために、デザインはデザイナーの独断で決められていくものから、知のネットワーク利用した専門家のチームが連携を組むものへの移行がますます進むだろうと感じられた。同時に情報自体の信頼性や、デザインへの正当性を精査する注意深さも今後ますます必要になってくるのではないだろうか。
それとは別に、発足11年目を迎えるSmartGeometryのコミュニティーとしての成長も目を見張るものがあった。もの作りの発想、環境を支えるのはそこに集う人だという事を再認識させられる。Shaneが会の締めくくりに繰り返し述べた「このコミュニティーは信頼関係によって成り立っている」という言葉はそれを印象付けるものだった。
SGは今年の9月にはカナダのモントリオール、来年の3月にはNYで開催される事もすでに発表されているので、今後の展開を今から楽しみにしている。
復興に向けて
日本の方々がこの困難を乗り越え、次の未来への一歩を踏み出すために
世界中が応援をしています。
未来をしっかりと見据えること。助け合うこと。そして、作り続けること。
それが希望につながることを願っています。
一日も早い復興に向けて。
Digital Architecture - Spring Events!!
<SmartGeometry2010 @Iaac Barcelona>
デジタルテクノロジーの凄さそして面白さは、あらゆる情報をビットに変換して繋げてしまうという強引でフラットな互換機能にあると思う。
少なくともコンピューターにとっては、こちらがつまらないレポートを書いていても、精緻なドローイングをしていても、目を剥くようなアニメーションを作っていても関係ない。さらにいうと、それが悪質なブラックメールになるのか、印刷されて美術館に飾られるか、ウェブにアップされるかも関係ない。
一方建築はその場所の敷地、天候、予期される災害などの制約から人間の身を守るという,互換性のきかないサイトスペシフィックなメディアとして長らく存在してきたし、逆に言えば建築家とはその特殊な技術を利用し、半ば排他的にその権威を維持してきた職業グループでもある。
デジタル建築の分野は、大きく言うとその全く違う二つの質を掛け合わせるようにして成り立っていて、異種交配を通じた実験を様々なスケールで行っている。そんな現状を「エレキを買ったばかりの中学生が、下手なソロを友達に弾いて騒ぎあってる状態」と評したのはBLDBLOGのGeoff Manaughだけど(!!)、作品の質も近年確実に上昇してきている。
ここでは日々更新される、この分野の最先端をかいま見る事が出来るイベントをいくつか紹介しようと思う。
SmartGeometry (2011年3月28日ー4月2日@CITA コペンハーゲン)
SmartGeometryは10年ほど前からCADのソフト会社Bentlayが主催する年に一度のデジタルアーキテクチャーワークショップと国際学会で、いままでイギリス、アメリカ、ドイツ、スペインなど毎回場所を変えて開催されている。近年のコンピュテーショナルデザインの広がりと低年齢化に伴いワークショップ枠の拡大に力を入れている。去年バルセロナで行われたSGに参加した時は、短い期間ながら機材やスタッフなどサポート体制がしっかり充実したワークショップで、とても満足出来るものだった。
今年のテーマは”Building the Invisible”。用意された10のクラスのうち興味のあるものに申し込む(3つ候補を挙げる)と返事が来るようだ。
必ずしも現時点でバリバリのスクリプティングスキルが必要とされるわけではないらしいので、将来留学を考えている学生にもオススメです。1月末締め切り。
ALGODE/AAST(2011年3月14日ー3月16日@東京)
おそらく日本で初めて開催される大規模なデジタル建築系の国際学会とワークショップ。
面白い事に、デジタルの世界でもその社会の文脈で得意分野や伸びしろが変わってくる。例えば、ここで企画されているワークショップでは木造構造に注目した制作が行われるとの事で、ヨーロッパとは違う日本の文脈でどのような研究が出てきて、受け入れられていくのかとても楽しみにしている。
残念ながらワークショップの締め切りは終わってしまったようだけど、東大で研究室を始めたAA School教授の小渕氏やコロンビア大学で活躍する長谷川氏など講師陣もフレッシュな顔ぶれ。
Fabricate (2011年4月15日−4月16日@Building Centre, ロンドン)
2009年のロンドンデジタルウィークの成功に続き、国際的なパネラーをそろえて再発信する学会+ディスカッションイベント。
前回の企画では建築の中でのインタラクティブデザインに焦点を置いた話題で盛り上がったが、今回は題名通り作る事に話が移るのだろうか。アカデミックな色が少し強いゲスト陣ではあるけど、サグラダファミリアの設計を担当するSIALのMark Burryや複雑系を得意とする構造事務所AKTのHanif Karaなどの参加は期待が持てる。
仕事始めの数週間で早くも疲れているので、
3月からのイベントを楽しみにしばらく乗り切りたいという意味も込めてオススメします!
AppleStoreロンドン2号店
ロンドンに2店目のアップルストアが出来たと聞いて嬉しくも思いながら、少しびっくりした。
どうして、実店舗?ましてや、さほど広くないロンドンのどこに2号店を出したのか。。。
「イギリスで一番のフロア面積を持つ店」とか「コヴェントガーデンに出来た」とかいう噂を聞くたびに期待は高まる。
なにせ、二番目の店舗が出来たコヴェントガーデンという場所は、フラッグシップのリージェントストリート店から歩いて15分ほどの場所。リージェントストリートはロンドンで一番のハイストリートで、東京の銀座やニューヨークの5番街にアップルストアが出来たのと同じ立地に当たる、ロンドンでは外せない場所だ。
<AppleStore - Regent Street>
逆にコヴェントと言えば古くからの市場を中心にバレエのロイヤルオペラやトランスポートミュージアムが周囲を囲む内向きな広場。アーケードの周りで行われる大道芸を目当てに、ショッピングに飽きた観光客の集まる少しユルい場所というイメージがあったからだ。
複雑な気持ちのまま行ってみると、ロンドン最大規模との前評判にもかかわらず、目立ったアップルマークも無い控えめな店構え。
ショーウインドーも無いため、通りに面して並べられたテーブルの上でMacの新商品をいくつかさわることができる。古い建物のフレームを壊さず改修して作った店舗は、天井も低くこじんまりした雰囲気なのだ。
いろんな意味で、ロンドンの一番古い大通りにハイテク、シンプル、ファッショナブル、と言ったMacプリンシプルを打ち出した1号店とは違う意味の心地よい違和感。
何なんだここは??とさらに進むと店舗の中心にある吹き抜けの空間に出る。
もともと中庭だったと思われる場所にガラスの屋根をかけてハイテーブルが置かれている。普通の電気製品を売る店舗には無い開放感のなかでMacを触る。ほぼ半分ぐらいの人は、自分のラップトップを持ち込んで使っている。開放感の中で、誰もがリラックスしているのが分かる。
周りを見ると、お父さんとお母さんがコンピューターに夢中ななか、後ろで子供が走りまわり、おばあちゃんがそれを端から見守っている風景。友達の家に遊びにいって、今にもコーヒーが出てきてもおかしくないような、リラックスした雰囲気がこの店舗にはある事に気がつく。
それぞれのテーブルも小さめに作られ、見通しの悪い既存のアーチに囲まれた小さな空間が上下、左右に繋がっていく構成は家のようでもあり、学校のようでもあり、コヴェントという場所の縮小版でもある。。。
そこで気がつく。アップルはこの2号店をMacを売るためだけの店ではなく、その経験や、家族やカップルで共有する楽しみを普段着の姿で体験してもらう店として作ったということなのだ。そして、コヴェントガーデンにもともとあふれるアットホームな雰囲気を店舗のイメージと構成にも反映している。
フロントにショーウインドーを作り、商品を並べるような事をしていないのも、実はMacを触るお客自体がこの店舗の広告になっているからということが後になって分かってくる。
企業と商品自体を広報するフラッグシップの役割があるとすれば、ユーザーに焦点を当てて顧客を繋げるという役割をこの2号店は持っているし、さらに今までに無いユーザーを獲得しようという新たな挑戦も見えてくる。
この画期的な経営戦略にロンドンで最大の空間を与えて打ち出そうという彼らのセンスに、まさに脱帽の2号店。
狙った顧客の気持ちはがっちりと掴むだろうなと確信させられる。
はやくも期待の高まる3号店では是非ソファーとコーヒーを!!とお願いしたくなる。
Apple Store, Covent Garden
住所;No. 1-7 The Piazza London, WC2E 8HA
電話;+44 (0)20 7447 1400
Emergent Space
©Takehiko Iseki
昔大切だと思っていたものが知らない間に手元から離れてしまっている事に気がついてあぜんとする。
CDも、写真も、本も、手紙も、財布も、地図もあっという間になくなった。
あるのはポケットの中の薄っぺらなスクリーンと、そこから聞こえるアナウンスにも似た友人の話し声。
本当に相手がいるのか不安にもなるし、いないならそれでも良いような気にもなる。
いまさら街に出てものを買うという現実との接点も何か時代遅れのような気がしてくるし、
そもそも選択肢が多すぎて何から買って良いのかも分からない。
思えば、コンビニが全国に広まり始めた90時代頭、それまで水曜にしか買えなかったジャンプが、月曜に離島の中学生の手元に届くようになった時に覚えた違和感に気がつくべきだったのだ。
もう街には自分だけの居場所が無くなりはじめているという事に。
変化は物理的な居場所だけではなかった。
本屋の息子というだけで、火曜日にジャンプを手に入れていた松本はコンビニの登場によって「預言者」の地位を奪われた。今では教師、役人、政治家たちが、グーグルとウィキリークスを操るフリーター達によって丸裸にされようとしている。
社会的(古い意味での権威的な)な居場所も同時にとても危ういものになっている。
それに気がついた一部の知的な発言者達は、140文字のメッセージを絶え間なく民衆に送ろうと努力を繰り返しているけど、それもしばらくすれば電光掲示板に流れる広告のように見向きもされなくなる事に気がつくだろう。
何よりも恐ろしいのは、人間がその状況に慣れていくスピードにある。
状況が変化するスピードに合わせて、順応のスピードを上げる事は間違っている。
スピードを上げるべきなのは判断力の方であって、適応力ではない。
だから、1時間前に読んだチャットも、1日前に送ったメールも、1週間前に食べた食事も思い出せないとしたら気をつけよう。
もう肉体と精神が乖離を始めている証拠なのだ。
デザインの現場でも上に書いた事と似たような状況が起きつつある。
身体が取り残され、データが暴走する。
暴走はとても面白い楽しみ方もある一方、建築の分野ではまだ「遅すぎる」つまり、暴走が苛立ちとなって現れる事態が多く残っている。
その結果、各部署の連絡系統の滞りが、不格好な雪だるまのように膨らんで止めようの無い怪物のように都市に押し寄せている。
デザインの暴走/停滞をコントロール出来ていない現状で、その適正速度を知るために、建築は不安定な精神と、頼りない身体をつなぎ止めておく機能に立ち戻るべきだと考えている。
人間というメカニズムを再生させるための場所として。
ただそれは都市の中で今までと全く違った現れ方をする。
突発的で、唐突で、予期しない方法を持って。
仮にEmergent Space(創発的空間)と呼ぶ事にするその新しい場は現在の都市空間に対する様々な示唆を含んでいる。そのESが生み出す現象の取り扱いに今は興味がある。
(つづく)
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