「新井淳一の布 伝統と創生」会場風景 撮影:木奥惠三
新井淳一(1932-)は織物の町、群馬県桐生市に生まれました。高校を卒業し、家業の織物業に従事する中、伝統的な布作りとともに、早くから新しい染織に加工を施した布の創作へと向かいました。糸の開発・染色・織・加工を通じて布の多彩なテクスチャーを生み出すその仕事は、国内外の素材メーカーや加工業者との連携のもとに行われてきました。
プラスチックフィルムを素材とする金属糸で織り上げた超軽量の布。それを伝統的な絞り染めの技法を使って薬品で部分的に溶かし、透明と反射を共存させた布。また、ウール100%の布を長時間水洗いすることで生まれる量感あるフェルト。布作りの常識にとらわれず、その原点を見つめることから生まれる新井の布は、常に見る者を驚かせます。
新井はファッションとの関わりでもその名を広く世界に知られるところとなりました。1970年代から80年代にかけて、三宅一生や川久保玲ら、日本を代表するファッションデザイナーとの妥協のないものづくりの協働は、新井の制作の領域を拡大させていきました。
本展は新井淳一の60年に及ぶ仕事の全貌を紹介する大規模な個展です。新作を含む多様な技法による布約60点を展示し、伝統的な手仕事を起点に新しいテクスチャーの創造に取り組んできた新井の発想を浮かび上がらせます。展示構成はパリを拠点に活動する建築家ユニットDGT(ドレル・ゴットメ・田根/アーキテクツ)の田根剛が担当。ダイナミックなインスタレーションにより、空間の中で自在に形を変える布を体感していただくほか、新井自身の言葉などを映像と音による空間演出で紹介します。
一枚の布に込められたものづくりの思想は、私たちに新たな創造のインスピレーションをもたらしてくれることでしょう。
展覧会情報
・会期:2013年1月12日[土]─ 3月24日[日]
・会場:東京オペラシティ アートギャラリー
・開館時間:11:00-19:00(金・土は20:00まで/最終入場は閉館30分前まで)
・休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、2月10日[日](全館休館日)
・入場料:一般1000[800]円、大・高生800[600]円、中・小生600[400]円
・お問い合わせ:東京オペラシティ アートギャラリー tel. 03-5353-0756
田根 剛によるギャラリートーク【予約等不要】
・日時:2013年2月3日[日]14:00 ─ 15:00
・出演:田根剛[DGT(ドレル・ゴットメ・田根/アーキテクツ)](建築家・本展会場構成)
・聞き手:佐山由紀(本展担当キュレーター)
・会場:東京オペラシティ アートギャラリー ギャラリー1, 2
・予約:不要(参加には、当日の入場券が必要です)
ゲストトーク・シリーズ【ホームページにて申込受付中】
・会場:東京オペラシティビル7F 第一会議室
・定員:各回 80名(全席自由/要予約)
・参加費:無料(展覧会の入場は別料金)
・開催日:
(1) 第1回:2013年2月17日[日]14:00 ─ 15:00
石内 都(写真家)× 森山明子(武蔵野美術大学教授)
(2) 第2回:2013年2月24日[日]14:00 ─ 15:00
小池一子(クリエイティブ・ディレクター)× 西谷真理子(ファッション・エディター)
(3) 第3回: 2013年3月17日[日]14:00 ─ 15:00
田中ぱるば(真木テキスタイルスタジオ会長)